マツド・サイエンス研究所

僕の宇宙船 遠乗り

「僕の宇宙船」では、最初として地球周回軌道を実現する最小限のシステムを考えた。だから、始めは地球周回の短期間の飛行だけだ。だが、宇宙は、果てしなく広く、地球周回は宇宙の入り口に過ぎない。バイクや自動車で言えば、地球周回は、ちょっと近所を走って居るにようなものだ。近場を走るのに飽きたら、遠乗り、つまりツーリングに出掛けよう。

さて、地球周回の次の目標となると、普通は、宇宙ステーションのように長期滞在をするか、そうでなければ月か火星だろう。だが、目的も無く同じ場所をグルグル回って居るのも面白くない。その上、地球周回には、役に立つ資源も生命維持に必要な空気も食べ物も水も無いから、定期的に地球から運ばなければならない。

月や火星への着陸も、そんなに魅力を感じない。地球外生命でも居るのなら話は別だが、わざわざ、岩だらけの荒れ地に降りる必要は無い。そもそも、苦労して、やっと地球の引力圏を脱出したのに、なぜまた、月や火星の重力の底に降りる必要があるのか? 一度降りたら、また上がって来るのは大変だ。できれば宇宙に浮かんだままの方が、さらに次の場所へ行くのに都合が良い。

では、何処か良いところは無いかというと、木星の衛星、イオ、ガニメデ、エウロパ、カリストや、土星のタイタン辺りだ。そこまで行けば、火山やら水があるくらいだから、何か居そうだし、もっと遠くの彗星の巣(本当に巣があるとは思えないが・・)なども生命の発祥説もあるくらいだから、行って見る価値がありそうだ。それで足りないのなら、いっそ、恒星間を越えたい。

だが、いきなり、そんな遠くへ行くのも難しいので、もう少し近場で良い場所が無いか。地球から比較的近くで、重力の底に降りることも無く、また、地球から物資の補給を受けなくても自給自足できるような、そんな都合の良い場所を探した。

結構、長い間考えて居たら、小惑星があることに気が付いた。

小惑星と言うのは、地球や火星と言った九つの惑星ほど大きくないが、惑星と同じに太陽の回りを回る文字通り「小さな」惑星だ。その大きさは、岩程度のものから、百キロメートル程まで様々だ。場所としては、火星と木星の間の軌道、いわゆる小惑星帯に沢山あるのだが、それ以外の場所にも在る。

小惑星と言うとイメージするとは、ガチガチの岩石とか隕石だろう。実際、地球の近くにある小惑星は、岩石のような状態だ。これでは、金属資源はあるかもしれないが、水や食べ物になりそうなものは期待できない。とてもじゃ無いが、自給自足など無理そうだ。

ところが、元々は、地球でも月でも小惑星でも、太陽系にある惑星や衛星の組成は同じようなものだそうだ。だから、大昔、太陽系ができた当初は、月や火星、小惑星にも、地球と同じ程度の割合で水や炭素があったそうだ。でも、長い間、太陽の強烈な光と熱を受けて、中に含まれた水分は蒸発し、宇宙にと拡散した。炭素も同じように無くなったそうだ。

地球は、強力な引力で、水分や炭素(多くは二酸化炭素と言う形で)をつなぎ止めているが、月や火星では引力も少なく、水分も炭素も無くなった。(月や火星に水分などが残っているか、どうかは常に議論の対象になるが)

月や火星よりも更に引力の小さい小惑星では、当然、水も炭素も無くなっている。

だが、この話、あくまで、「太陽に近く、光や熱を多く受ける」軌道だけの話。太陽から離れ、受ける光や熱が少なくなると、水分は蒸発せずに残っている。例えば、木星の衛星のガニメデやエウロパなどは、火星よりも引力が少ないのに、水が大量に残っている。また、ハレー彗星のように、ほとんどの時間太陽から離れた場所に居て、たまに太陽に近づく彗星の核にも水分が多く残って居ることも良く知られて居る。

計算上、太陽から6億キロメートル以上離れた場所なら、水分が蒸発せずに残るそうだ。ちなみに、地球は太陽から1億5千万キロメートルの距離にあり、火星は2億3千万キロメートルの距離で、それより、ずっと近い。それに対して、木星は7億8千万キロメートルの距離だ。だから、木星の衛星のガニメデやエウロパに水が残って居て当然だ。

肝心の小惑星が、どうだと言うと、ちょうど、太陽から6億キロメートルの距離が小惑星帯だ。だから、小惑星帯には、水分と、ついでに炭素を豊富に含んだ小惑星が山ほどある。

だが、6億キロメートルと言うと、ちょっと遠い。火星より木星に近いくらいだから、行くのは大変だ。

そう思って居たら、水分を含んだ小惑星は、もっと近く、太陽から3億8千万キロメートルあたりから、数は少ないが存在すると、話に聞いた。

先程の「太陽から6億キロメートル以上離れれば、水分が残っている」と言う話と矛盾しそうだが、そうでは無い。こう言った小惑星は、元々は太陽から6億キロメートル以上離れた軌道を回って居た。しかし、地球のような大きな惑星と違い、小惑星の軌道は安定して居ない。木星などの大きな惑星の引力で軌道が落ちて来たらしい。

だから、このような惑星は、いずれは太陽の光と熱で水分は蒸発して無くなってしまうのだが、最近、遠くの軌道から落ちて来たばかりなので、まだ、水分が乾き切って居ないのだ。もちろん、宇宙の話のことだから、「最近」とは言っても、何百年とか何千年、もしかしたら何万年前の事だろうが。

いずれ、水分は蒸発して無くなるとは言え、しばらくの間は大丈夫だ。だから、ここに自給自足できる「宇宙基地」を作ってしまう。

ざっと計算すると、太陽から3億8千万キロメートルに行くのに必要な宇宙船の性能は、火星に行って着陸するのと同じ程度だ。むしろ、火星のように大きな引力に逆らって離着陸する必要が無い分、楽かもしれない。その代り、時間はかかる。流石に遠いので、往復に3年以上必要だ。ちなみに火星なら、2年強だ。

結構、手頃な距離に良い物件(?)がある事に気付いたのだが、逆に気になった。アメリカ等の宇宙大国が、何故、こう言った小惑星を狙わずに、火星着陸を目標にしているのだろうか?

単に、小惑星の方が遠いから、難しいと思って居るだけか、それとも小惑星には私が気付いて居ない致命的な欠陥があるのか?

と、色々、考えて居たら、次のような考えに思い当たった。

「アメリカは、大昔の大航海時代の新大陸発見と同じ事を宇宙に当てはめようとしている」

つまり、アメリカが欲しいのは、「大陸」であって、「島」じゃないのだ。月とか火星の表面積を調べてみると、月はアフリカ大陸より少し大きく、火星は地球の全大陸の合計に匹敵する。だから、月とか火星とかへの着陸は「新大陸発見」に匹敵する。

それに比べて、小惑星の大きさは百キロメートル程度が最大だから、「島」だ。だが、小惑星を単純な球体だとすると、直径90キロメートルの小惑星の表面積は、日本全土の面積に匹敵する。本州だけなら直径76キロメートル、北海道は54キロメートル、九州42キロメートル、四国33キロメートルだ。

島国の日本に生まれ育った私に取って、直径100キロメートルの小惑星で十分だ。むしろ、もう少し小さく、四国や九州程度でも十分なくらいである。

まあ、小惑星の形状が「球体」と言う計算の前提も現実に合わないし、実際に小惑星に住むとなったら、表面に住むのではなく、穴を掘って中に住むことになるだろうから、話半分に聞いてもらいたい。そもそも、「アメリカが、島ではなく大陸を目指す」と言うのは、あくまで私の憶測だから、いい加減な話である。

とにかく、「僕の宇宙船」の、次なる目標は「水のある小惑星」に決めた。次回以降は、どうやって小惑星に行くか、滞在するか、帰って来るかを、何回かに分けて、お話する。

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