第3章『宇宙に行って、暮らせるの? 幸せなの?』じゃないの?
『宇宙は広大だ』
この言葉は、常に言われ続けられて居るが、その本当の意味まで理解して居る人は、むしろ少数かも知れない。
宇宙は、一言で広大だと言ってしまう程度の広大さではない。地球の直径は 1万3千キロ位だが、太陽系の直径は海王星の軌道まででも90億キロ位になる。
銀河系の大きさは、約10万光年、太陽系の一億倍だ。
銀河系には、太陽と同じように自分で光る恒星が 5000億 個くらいあって、さらに我々が観測できる範囲には、銀河系と同じような島宇宙が 4000億もあるそうだ。我々が観測できる範囲の外側、つまり「宇宙の果て」の向こう側にも宇宙が広がって居るらしい。さすがに宇宙の果ての向こう側に、どのくらい宇宙が広がって居るのか、はたまた無限に宇宙が広がって居るのかは、色々と意見が分かれて居るらしいが、とにかく、判って居る範囲だけでも、とてつもないくらい宇宙が広がって居るのだ。(「宇宙の果て」と言うけど、その先に、さらに宇宙が広がって居るなら「宇宙の果て」じゃないだろう・・・って私も思う)
宇宙全体は、とてつもなく広く、その中にある星の中には地球よりも住み易い星があっても、ちっともおかしくはない。
だが、宇宙全体だと、余りにも遠く、流石の私にも、どうやって行ったら判らないので、もう少し近場で太陽系内に限って、話題を進めよう。
太陽系の中で、地球以外の惑星は、人が住めるような環境ではない。特に私が薦めている小惑星など、水も空気も食べ物になりそうも無い岩だらけだと思われているかもしれない。
ところが、必ずしも、そうでも無いようだ。
私は良く知らないのだが、太陽系全体は、一つの超新星が爆発した破片からできているらしいそうだ。
つまり、太陽自体も、惑星・小惑星・衛星・彗星と言ったものは、元々同じような組成で構成されていたようだ。
最初の段階で、どんな惑星も小惑星も、地球と同じような物質の組成でできていた。
現在、色々な惑星があるのは、その後の変化によるものだ。
太陽に近い星は、太陽の光に炙られて、水など揮発性の物質が蒸発する。蒸発したガスが、太陽風などに飛ばされると、その星から水分などが無くなってしまう。
地球のように大きく引力が強い星なら、水分が飛ぶ前に引き留めることができるが、月のように引力が弱いと引き留めて置くことができない。何十億年か前に、地球と月ができた時、月にも地球と同じ割合で水があったはずだが、その後、月の水は太陽の光で炙られて、蒸発し、水蒸気が光や太陽風で飛ばされ、無くなってしまった。それに対して、地球は引力が強く、水が残った。地球と月の差は、大きさで決まった訳である。
火星も同じで、引力が少なく、水が無くなってしまった。(最近では、火星にも意外に水が残っていると言う学説もある。まあ、水が残っていたにしても、表面に見えて居る訳ではないから、地球ほどに大量の水が残って居る訳ではないのだろう。)
太陽から遠い星になると、太陽からの光が弱く、そもそも水が蒸発しない。だから、星の大きさによらず、全ての星に水が残っていると思われる。地球から太陽まで1億5千万キロなのだが、その4倍の太陽からの6億キロより離れた場所、火星と木星の中間より、かなり木星寄りより遠い場所にある星には、水が残って居る。
例えば、木星の衛星のガニメデやエウロパは、表面が厚い氷に覆われるほど、水が多いし、彗星の核にも水が大量に含まれて居ることも良く知られて居る。小惑星も例外ではなく、その場所にある小惑星には水が多く残って居る。
例外は存在するもので、木星の衛星で最も木星に近いイオには水は残って居ないそうだ。その理由は、木星の出す熱だか、放射線だが、潮汐力の影響だかで水分が蒸発しきってしまったようだ。
イオは別としても、太陽からの遠い場所では、それ以外の衛星や小惑星には水がある。水だけではなく、炭素や、その他の元素も十分にある。
逆に大きな惑星、木星や土星は、大きすぎ、重力が強すぎ、せっかくの資源を使うことができない。もちろん、強力な重力、それに高い気圧に耐えられる強力なロケットを作ることができれば、資源を使うことができる。だが、そんな面倒な事をしなくても、より重力の少ないところから始めた方が速い。
宇宙の資源を楽に使うには、大きくて重力の強い惑星よりむしろ重力の小さい小惑星の方が有利だ。
例えば、月の表面積は南極大陸程度で、火星の表面積は、地球の全陸地面積を合せた面積に等しい。
これに対し、小惑星では、大きなものでも表面積は九州程度しかないし、全ての小惑星の総質量を合せたところで、月の37分の1しかない。
だが、小惑星は重力が小さいから、穴を掘っても落盤の危険が少なく、中までミッチリ使うことが可能だ。
地球の場合、地表から数メートルから数十メートルしか有効に使って居ないだろう。もちろん、地下街などで地下深くまで掘って居るものもあるし、さらに炭鉱などでは千メートルよりも深く掘って居る所もあるかもしれない。だが、それらは極めて例外的で、ほとんどの場所では植物の根のはる範囲しか資源を使って居ないであろう。だから、地球全体の平均なら、地表から数メートルから数十メートルと言うところが資源を有効利用している事になりそうだ。(陸地はともかく、海洋での資源利用を、どう評価するか、良く判らない。これは今後の課題と思って居る)
小惑星の総質量は少ないが、それでも地球の陸地に積むと、高さ 4千メートル程度になる。これが、資源として全て有効に使えるなら、現在の地球の何十倍、何百倍の量が使える事になる。とは言え、小惑星の物質の百パーセントが使える訳ではないだろう。仮に10パーセントが使えるだけでも、地球の資源の数倍から数十倍の資源があることになる。
小惑星に、資源が十分にあることは示したが、それはあくまで元素の量としての話で、その元素が使える状態にあるか、どうかは別問題だ。地球は、小惑星には比べ、大きい、空気や水があり循環して居る、生物が居ると言う違いがある。
地球のように大きな惑星の場合、惑星形成時に一度高温で溶けた時、重い物質が中心部に集まる。地球の場合、ウランなどの重金属が中心部に核を作り、その回りに鉄などの金属が集まると言うような構造ができる。これに対して、小惑星では、均一なままになって居る場合が多い(と言い切って良いのか、極めて自信が無い)
また、地球は海の水が蒸発し、雨になり、川を流れ、海に流れ込むという循環を繰り返す。この時、金属などの濃度を圧縮し鉱床を作る。小惑星では鉱床は形成されず、金属濃度が高くなることは無い。つまり、鉄鉱石などのように金属が使いやすい状態で得られない。
当然の事だが、小惑星には呼吸可能な大気も無いし、食べるものも無い。意外な事かも知れないが、呼吸可能な大気のための酸素成分は生物が作って居るのである。もちろん、食べ物になる有機物も生物が作って居ることは言うまでもない。
小惑星には、金属などの物質は、元素としては存在してはいるが、地球のように使いやすい高い濃度で得られない。薄い状態で散在している元素を人工的に集めて濃縮しないと使い物にならない。酸素も食べ物も、そのままでは無いので、植物等を育てて得るしか無い。元素として存在しない訳ではないから、エネルギーと時間をかければ不可能な話では無いが、簡単ではない。
エネルギーについてだが、宇宙では太陽光が使える。宇宙空間では、地球上と違い、太陽光が大気で減衰したり、雲や雨で遮られたり、夜の間は使えなかったりはしない。
水分の残って居るような小惑星の場所では、太陽から遠い分、太陽光が弱くなって居るが、それでも、人一人が生きて行くのに必要なエネルギーは24メートル四方の太陽電池で供給できる(人一人に必要なエネルギーを 10kW とし、太陽電池の効率 20 パーセントとした。なお、地上の都市での電力消費量は一人当たり 1kW 程度である)
太陽光以外のエネルギーでは、核分裂・核融合が考えられる。前述したように水の循環による鉱床の形成が無いので、小惑星では濃度の高いウランを得ることは難しい。薄いウランを集めて原子炉を作ることに意味があるかは判らない。
水分がある以上、水素や重水素を使った核融合炉も考えられる。宇宙には核融合に便利なヘリウム3が多いそうだが、そんな都合の良い話があるのか、ちょっと怪しいとも思える。
核分裂・核融合とも、将来的な技術で、少なくとも最初の段階では、太陽光エネルギーから考えた方が良さそうだ。
太陽系の小惑星中に人類が広がった状態を想像してみよう。
人々は、小惑星の中に穴を掘って住んで居る(宇宙には放射線が多く、それを防ぐためには、5メートルくらいの穴を掘って住むのが一番)
エネルギーは、大きく広げた太陽電池もしくは反射鏡で集めた熱をスターリングエンジンなどでエネルギーに変えて使って居る。
シアノバクテリアのような微生物を培養して、呼吸のための酸素を得る。食べ物は微生物を食べるか、穀物や家畜を育てる事で得る。
実は、水を得るのが一番簡単かも知れない。水分を濾過・蒸留するだけで良い。
小惑星は小さいから、一番大きな小惑星でも地球の重力の百分の1位しかない。でも、遠心力を使って人工的に重力を作ることは可能だ。映画やアニメの宇宙ステーションやスペースコロニーは、全体を回転させるが、小惑星の場合、小惑星全体を回転させるより、むしろ、居住区を穴の中に置いて、その部分だけ回転させた方が合理的だろう。
小惑星を形成する物質だけで、21世紀初頭の地球より数倍から数十倍の豊かな文明を築くことができる。
小惑星全体に人類が広がるには、数百年以上かかるだろう。だが、いずれは、人類は小惑星全体に広がり、それに飽き足らなくなり、木星や土星の衛星や彗星にまで広がる。
太陽系全体に広がった後、つまり、現在の数百倍以上の豊かさを得た後、次は、恒星間の世界へ乗り出す。
銀河を征服するのに何百万年かかるが、想像もできないが、いずれは、それすらも飽き足らなくなり、他の銀河へ乗り出すに違いない。
小惑星での暮らしは、物質的にはむしろ現在よりも豊かなものになるかもしれない。だが、いくら物質的に豊かになっても、大自然の無い生活が楽しいのか、幸せなのかは別問題だ。幸せかかどうかは、物質的なものではなく、精神的なものだからだ。
小惑星での暮らしが楽しいかどうかについては、私は楽観視している。住めば都というが、開拓された土地、例えば、新大陸ならニューヨークやロサンゼルス、国内なら札幌と言う都市に暮らす人は楽しいだろう。札幌などは自然豊かな都市だが、自然の少ないニューヨーク等の大都市でも暮らしは楽しい。極端な話、砂漠で何も無いラスベガスでも、世界中の人々のあこがれの的になる。
しかし、必ずしも「楽しい」ことと「幸せ」であることは同一ではないだろう。前者は娯楽で解決できるが、後者はそうではない。幸せとは、その人の生きる意義とか、そういうものに繋がる。あまりに哲学的になるので、これ以上深入りしないが、少なくとも私は「幸せ」を見つけられると思って居る。
さて、小惑星には資源があり、そこで豊かな生活ができる可能性と、その先の宇宙へ広がる足掛かりになることは話した。
だが、いくら素晴らしい将来像でも実現性が無ければ、絵に描いた餅である。
次回から、「どうやって、人類が小惑星に広がるか」の話をしよう。
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