さて何度も何度も予約して、病院登録を終えた我が家は、皆元気だが、”これで、いつ病気になっても安心。”なんて、感じがありホッとしていたある日、いきなりの電話!!私は、英語が苦手。だから我が家にかかってくる電話のコール音と玄関のチャイム・もしくは、ノックの音が恐怖である。それなのに電話のコールが・・・仕方なし「ハロー」と言って取りあえず、電話に出る。向こうは「○○サージェリーの○○・・・・」と機関銃のように話し始める。”お願い!!ゆっくりはっきり、話してぇ〜。”と心で願いながら、私が英語があまり話せないことを伝え、気長に根気強く、私が理解するまで話してもらう。(ここで、諦める人もいるのだが・・・どうやっても話し続ける人は、本当に我が家に用事のある人だと思い、私も頑張る事にしている。)
そして、電話の内容は息子の育児相談に、我が家を訪問したいが良いか?と言うものであることを理解し。再び、”来てくれなくて、結構よ!!皆元気で〜す。”と心の中で強く叫び、これが英語で話せたら・・・と思いながら、訪問時間の確認をしてしまうのであった。ただ、唯一救いに思われたのが、私の英語力の無さのおかげか・・・”日本語の出来るエキスパートを連れて行く。”と電話の相手が言っていた事だった。ただ、これが私の聞き間違いでないことを願い、その日の午後を迎えることになる。
そして、その日の午後。車の止まる音が・・・中から女の人二人が出てくるのがリビングの窓越しに見える。玄関を開けに行く・・・一人は栗色の髪の背の高い女性。もう一人は、金髪のさらさらショートボブヘアーで、身体の線の細い華奢な女性。後者が日本語で「こんにちわ。わたし、あまりにほんごが、じょうずでないですけど、よろしくおねがいします。」と話してくれ・・・ホッとした私。二人は玄関先で靴を脱いだ。(私達は、家の中で靴を脱いで暮らしているが、訪問者に対し、靴を脱ぐことをお願いしたりはしない事にしている。訪問者自身にまかせてあるのだ。玄関のドアより外で脱いで入ってくる人もいたり、土足でドンドン入ってくる人もいたりと・・・なかなか面白い。)
また話しが脱線してしまった・・・。とにかく、通訳の彼女を通し、一通りの話をする。内容は日本でも良く聞かれるような、お話は上手に出来るか・走れるか・ジャンプできるか・ご飯は沢山食べるか・好き嫌いはないか・お友達とは遊んでいるか・今まで大きな病気はしてないか・なんて言うものだったが、慶応に留学していた通訳の彼女は、3年前から日本語を話してなかったらしく、保健婦さんから英語で聞き日本語に訳す時、辞書を引き引き話し、私の答えをまた辞書を引き引き保健婦さんに伝えてくれるのだから、かなり疲れた事だろうと思う。それでも、言葉の分からない私に「いろいろ、たいへんですね。」と声をかけ、自分の自宅の電話番号まで教えてくれた彼女は、大変優しかった。
とにかく、話を終えて、”日本のお茶でもいかが?”と言った私に、「時間がないから・・・」と断って帰ってしまった保健婦さん。時計を見ると、なんと1時間半もの時間が過ぎていたのだ。本来なら30分で終わるくらいの話の内容だったと思うが、辛抱強く話をしてくれたお二人に感謝している。だが、病院登録の後は、まだまだ続く・・・。
ある朝ポストマンが届けてくれた手紙の中に、またもや私達の頭を悩ませるものが、入っていたのだ。それは・・・息子の3歳4ヶ月検診のお知らせだった。うーん!!確かに日本での3歳児検診は、受け損ねたと思っていたが、まさかイギリスで受ける事になるとは・・・。
さて、検診日当日。雨の降る寒〜い6月11日、まず身長・体重測定。身長75センチと言われ、主人は「ちいさいなぁ。」と言っている。”え?75センチ?いくらなんでも、そんなはずはないでしょう。1歳半の時でも80センチ以上あったはず・・・。”でもおかしいと言えず、ソファに座っていたら相手も首をかしげながら、測定器を眺めている・・・。彼女もおかしいと感じているに違いない。しばらくすると、持ち歩ける簡単な身長を計る物を持って来て、測り直してくれた。91センチ。”ホッ!!”測定器は壊れており、何人かの保健婦さんが集まって眺めていた。
いよいよ、先日訪問してくれた保健婦さん相手の検診。主人は仕事を休み通訳。今度は保健婦さんから息子。息子の言葉を保健婦さんへ・・・相手は、英語のみで話すのだが、息子はなんとなく判るらしく、ちゃんと受け答えしている。と言っても、保健婦さんが小さな積み木を積み上げ壊す。次に息子に同じ事をさす。また彼女が積み木を重ねトンネルを作り、汽車に見立てた鉛筆を「チュッチュッチュッ・・・」とチューチュートレインごっこをさす。積み木の色・数を言わす。(もちろん英語で答えるのだが、何故か息子は知っていた。)紙に印刷された、色々なものが何かを言わす。この答えの正解率は半々、息子が「貝」と答えたボートは、私達も”ナルホド貝と言われると、そうも見える”と言った中途半端な絵と色だった。
視力検査は、一枚の紙にY・T・X・H・Oが書いてあるものを息子に持たせ、保健婦さんが部屋の隅に立ち、こちらは一枚一枚めくる度に、これらの5つのアルファベットの大きさが小さくなっている仕組みだ。はじめ、両目・左目・右目・・・右目の最後の方は、遊び感覚でやっていた息子も嫌になってきたのか、最後のアルファベットが本当に見にくかったのか、ごそごそしながら違うアルファベットを指差している。保健婦さんは必死に「ユウタ、ルック」と声を掛け続けるが、もう無理。「見えないんだよぉ〜」でおしまい。これのせいで、右目の検診の為だけに、再び呼び出されている息子である。
さて、次は聴力。まず5個のおもちゃを机に並べ、一つずつ保健婦さんが息子に教える。「ユウタ、ハウス」「ユウタ、ダック」と言う風に5つの単語だ。そして、息子にハウスと言い指を指させる。一度聞いただけで彼は全ての単語を覚えていた。最初言葉が判らないのでは、今日は聴力検査は出来ない。と言ってた彼女も、これならと言って、あと2個のおもちゃを追加して検査する事になった。おもちゃを息子の前に置いたまま、彼女が息子の左後ろに立ち、小さな声で「ハウス」とか「カウ」とか言うのを聞き、息子がおもちゃを指差すのだ。右後ろからも同様に行なう。この検査で私達夫婦は、息子の見方が変わり、これまで上のお姉ちゃんより、ちょっぴり遅れているように見えた、かわいい息子が風船の事をプーテンと発音するので、”プーテン”と呼んでいた。けど、この日で私はそれを止めた。あとは運動能力を見ているのか、ジャンプさせたり片足飛びさせたり、三輪車がこげるか・階段が登れるかの質問を受け。保健婦さんとのやり取りはおしまい。
最後に女医さんに心音を聞いてもらうと言うので、見ていると、心音の後いきなり息子のズボンをおろしモミモミ・コネコネするドクターに「なにするんだよぉ〜」と照れて言う息子の反応は、正しいと思った。一体何の為の検査なのだろう?取りあえず、右目の検査を残し、全て心配無しの評価をもらい、”少しの英語を話し、沢山の英語を理解し、色については十分英語で言える。”と書いてもらった検査結果は、大切に母子手帳に貼られる事になった。