野田真紀のお気楽・極楽 英国便り

その13 美容院に行くよ 21st October 1998


美容院に行くよ

 6年前・・・長女出産を控えて、ショートカットにした私。
 ショートカットと言うと、手入れは簡単だけど、1月と間隔をあけずに美容院へ行かなければ、ボサボサ頭になってしまう。”こんなに短い間隔で、イギリスの美容院へ行けるか?・・・どう考えても無理だぁ”と言う事で、まめにカットに通わなくても良いように、少しずつ髪の毛を切り揃え延ばし始めたのは、ちょうど1年前。

 さて、延び始めた髪の毛は、渡英して来て日に日に長くなり、特に前髪は始末におえず、カチューシャでとめるしか方法はなくなってしまった。子供の髪は日本に居る時から、私がカットしていたので大丈夫。主人は・・・日本に居る時、私がカットしてあげようか?と何度言っても首を横に振るばかりだったのに、こちらの理容室に行くのが嫌で、とうとう私の腕を振るう事に・・・。娘は、カットし終わった主人に向かって「ゆうたと同じだぁ〜」と笑っている。カットする前「お父さんの頭タワシみたい」と言っていたのよりはマシなのか?

 こうして、主人の髪も短くカットされると、私のボサボサ頭がどうしようも無く気になり、イライラし始めた。渡英して、はや半年が過ぎていたのだから当たり前か!とうとう我慢できなくなり、主人に相談。『家の近くの小さなショッピング街に美容院がある。そこへ行ってみたら?』主人が営業時間を調べ、主人の休みの土曜日が良いね・・・と予約に行ってくれた。

 カットだけなら、10ポンドほどだから、そう高くも無い。だけど、店の主のようなおばさんに、シャンプーはすべきだ!!と押し切られて帰って来た主人。私としては、やっとカットしてもらえる!とウキウキしてるのだから、主人には悪いけどシャンプーの事など、どうでも良くて”で、何時から?”『来週の金曜の朝1』”え〜?!今日は無理でも、1週間も先なのぉ?”カットして、さっぱり!の、つもりでいた私は、そりゃ、がっかりした。

 長いボサボサ髪の毛が今までにも増して、嫌だった1週間後。予約カードを持ち来店。妻は、ほとんど英語が話せないと、予約の際主人が言っておいてくれたので、特に何も話さなくてもOK。まず日本のように、ケープを出して着せてくれる。ここで私は大失敗をやらかした。日本のケープはエプロンのように前が隠れるように着る。だから当然のように出してくれているケープの方を向き、手を差し込んだのだ。すると、店員が笑いながら、それを脱がせ背中から着せてくれ、前でリボンを結んでくれたのだ。”ヒョエ〜、恥ずかし〜い。恥ずかしいけど、まだカットしてないもの帰れない・・・。”顔を真っ赤にして(私よりはるかに、赤い顔をしている定員さん。色白の彼女は耳や首まで真っ赤。こんなに笑われる私って・・・。)、シャンプー台へ。ここでは、お湯は熱くないか?とか日本で聞かれるような事を聞かれただけ。

 主人の言う店の主のようなおばさんが、「何時からカットしてないの?」「半年前から・・・。」「えー?!」なんて会話?をし、カットする席へ移動。店の真ん中に向かい合って8席。壁に向かって3席と反対側の壁に向かって5席ほどあるだろうか?皆、同じ赤いケープの前をリボンで結んでいる・・・。

 さて、いよいよカット。こちらで購入したヘアカタログの本を見せ、そのようにカットしてもらうつもりでいた私。”髪を延ばすのは、私には無理!”と半年で懲りた私の選んだ髪型は、耳の辺りにかかる髪にちょっと特徴のあるショートボブ。店員は、私の髪をドンドン切り落とし、その耳の辺りの髪の揺れ具合を熱心に見ながらカットしていき、その辺はまずまず・・・。そして、頭の上の方の髪の毛をおもいっきり短くカットして落としている。”え?この写真に、ショートボブってちゃんと書いてあるでしょう?ボブは、そんなに頭のてっぺんを短くカットしないの!!”だけど、これが言える訳もなく・・・それに言えたところで、もう一房カットしちゃってるのだから遅すぎる。”え〜い。どうにでもなれ!!”

 このイギリス式ケープ・・・首の処が丸出しになり、肩にかけられた落ち掛けのタオルも役立たず。だから首の透き間から切った髪の毛が、どんどん入って来て、じっと座っているのも痒い痒い。「さぁ、出来たわよ。」と店員。”頭のてっぺんは、主人のひよこ頭(たわしだったか?)より短いかも・・・。けど髪は延びる。それより痒い。速く服を脱ぎ捨てたいよぉ”と代金とチップを払い、「サンキュー」店を出ようとした時、店の奥の方にいた主が、親指を立てニコッと笑っている。”そう。似合うわよ!とジェスチャーしてくれたのだ”この後、家まで走って帰りバスルームへ飛び込んだのは、言うまでもない。シャワーした後、やっと落ち着いて、こざっぱりした髪を見る事が出来たのだった。

 この時から2ヶ月半が過ぎた。途中、私の母が渡英したおり、延び始めた毛先をカットしてもらったとは言え、またもボサボサ頭になった私。再び主人に予約に行ってもらう。1週間くらい待つ覚悟は出来ていたが、予想に反し、この日の午後予約が取れ、ルンルンでカットに行く私。今回は、ケープの着方も間違えない。けど、今回はシャンプー台に頭がちゃんと乗らない(背が低すぎ)。店員がシャンプー台を傾けたり、椅子を引き寄せたりしてなんとかOK。さて、今回もヘアカタログの雑誌持参で、お願いする。「これは、凄く短いけど良いの?」「いいんです。」「後ろの髪は、○○のようにカットする?△△のようにカットする?私は、△△が・・・。」と早口で話し始めた。「私は、英語が少ししか話せないです。」「だからね・・・後ろの髪の毛があるでしょう?」”後ろの髪って言うところだけは判るの!その後の事はチンプンカンプン。もう何度言われても同じよ。好きにして頂戴。”と思っても言えないから、「ビシッっとカットしちゃって下さい!」(ビシッの部分は日本語)と私。店員のおばさん諦めて、「じゃ、私の好きにするわね。」”そうそう。はじめから、好きにしてくれれば良かったのよ。

 どうせ、写真があってもそんな風には、仕上がらないものね。”と思いながら、やはり気になる・・・。今回のおばさんは、髪の毛が首から入らないよう、ケープの首の紐を無理矢理きつく縛り上げ、タオルをしっかり巻いてくれた。”なーんだ。こうすれば痒くならなくて済むんじゃないの。前の店員よりずっと気が利いてるわね。やはり歳の功って感じ”と思いながら見ていると、耳はすべて出すように言ったので、奇麗にカットされていく。と・・・急におばさんがいなくなった。見てると、大きな布テープ(傷版)を切って、指に貼り付けている。「私の指を切っちゃったわ!」”おいおい・・・私も良くやるけど。”「大丈夫ですか?」「平気よ!!」と言っているおばさんの顔は、真っ赤だった。やはりプロだもの恥ずかしいのね。

 さて、どんどんカットされ、なるほどかなり短くなった。おばさんの言っていた後ろ髪は、真ん中が少し弓形に反れた様にカットされている。「普通に丸くカットするより、この方が良いと思って・・・」とおばさん。「これで良いです。」と私は、答え代金とチップを払い外へ・・・。今回のおばさん・・・”年の功って感じ”の分料金が高かった。

 余談になるが、成人教育センターに通い始めた頃、同じ教室に、スペイン人の美容師がいた。彼女は、まだ就職しておらず、彼女の家へカットしに行ったら、6ポンドでカットしてくれると言うのだ。私はその時、『そりゃ安い!!凄く髪も伸びてるし、どう言えばカットしてくれるのかしら?もうちょっと慣れたら、お願いしよう!!』と心に決め、英会話を習い始めた。しかし数週間後、彼女は、こちらで有名なチェーン店トニー&ガイという美容室に就職し、彼女の家でのカット料金は、数週間で倍にはね上がったのだ。(最初に、どんな英語ででも良いから、話しカットしてもらっとくんだった・・・と、いつまでも悔しく思った私・・・。)

 さて、前回みたいに痒くなんてならないと思っていた私。歩き出すと痒い痒い。今回もまた走って帰宅し、バスルームへ直行。髪の毛だらけの服をはらい、髪を洗い着替える。”あんなに、ケープを縛り上げても前回と同じだなんて・・・”こう思うと、日本の美容院は至れり尽くせり。カットの前も後も、しっかりシャンプーしてくれ、髪の毛が背中にどっさり入ってる事なんてないもの。なんと言っても、微妙な言い回しが通じるのが一番。でも帰国までには、また美容院に行く事になるだろう。次回はどんな事が、起こるかな?!
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