私の5歳の娘が、英国の公立小学校に入学した。娘は英語が全く話せない上、小学校には誰も日本語の判る人は居ない。が、毎日、楽しそうに学校に通っている。
娘本人の感想や学校の写真などは、えり子の英国たよりのページを見てもらう事として、ここでは、英国と日本の学校制度の違いと英国の学校に子供を入れる経験談を紹介する。ついでに実体験に基いた英国の小学校に子供を入れる為の簡単なノウハウを紹介する。現在、英国滞在中や今後渡英する人で、幼稚園から小学生の子供をお持ちの、特に日本人学校などの無い地方都市や田舎に行かれる方のお役に立てれば幸いである。(英国文化考のポリシーは、役に立たない情報の紹介なのだが、今回はちょっとだけ役に立つ情報かもしれない。)
私の娘は5歳、昨年12月に渡英する時には、まだ、幼稚園の年中であった。娘は全く英語は話せない上、私の住んでいるギルフォードは、田舎で日本人の為の幼稚園も学校も無い。当初は、本人も話しの通じない英国人ばかりの中に入れられるのが嫌だと言っており、また日本の小学校入学前に帰国予定だったので、幼稚園/学校には通わせず、家に置いておいた。
ところが、英国滞在4ヶ月を過ぎると、本人も英国人に慣れて来て、土日など公園で、英国人の同世代の子供と遊べるようになってくると、幼稚園なり小学校に行きたいと言い出した。学校のある平日は、公園に行っても娘と同世代の子供は皆学校に行っており、遊び相手が居ないのだ。娘は渡英前に幼稚園に通っており、その楽しさを知っているから、なおさらである。
それまで、「英国の幼稚園/小学校が受け入れてくれるの難しい」と言う噂も有ってほって置いた私も、本人が行きたいのなら話しは別と、まず、保育園とか幼稚園に当たるPlaygroupやNuseryに電話したが断られた。断られた主な原因は、定員一杯である事と娘が既に英国の義務教育の年齢に達している事であった。
日本では、就学前の5歳児が、ここ英国では義務教育で小学校に通わなければならないとは?
ここで、日本と英国の学校制度を紹介しておこう。但し、私は教育関係の専門家ではないので、自分及び娘の体験から知った知識を紹介するだけのごく簡単なものである。もし、何らかの間違いがあったらご容赦願いたい。その場合、メールで御指摘いただければ、このページに早急に反映する所存である。
下の図は、日本と英国の年齢と学校/学年の対比を義務教育である小中学校を中心に示したものである。この図は、6月生まれの私の娘に合せてある。同様に4月〜8月生まれの子供は下図が当てはまるが、1月〜3月および9月〜12月生まれの子供は下図が当てはまらず、学年が少しずれるので注意してもらいたい。
図でも判るように、英国では5歳から義務教育になる。公立の場合、日本の小学校に当たるPrimary
Schoolは、前2年のInfant Schoolと残り5年のJunior Schoolで構成される。(Primary
Schoolを勝手に「小学校」と訳したが、本当はどうなんだろうか?) 私立の場合、呼び方が違うが、義務教育の開始は5歳と同じである。
これでは、既に義務教育のはずの私の娘を、PlaygroupやNuseryが「規程では、4歳以下」と断ってもおかしくはない。
なお、英国の義務教育は5歳スタートだが、日本のように全員が一斉に入学するのではなく、5歳の誕生月から、入学するのだそうだ。だから、みんなバラバラに学校に入学するらしい。また、学校が混んでいるなどの理由で5歳になっても入学を認められない事もあり、少なくとも6歳までに入学するように学校側も準備するらしい。この辺の細かい事に付いては、詳しくは良く判らない。と言うのも、私の娘は5歳と言っても6歳になる寸前だったので、簡単に入学を認められたからだ。
さて、いよいよ、子供を小学校に入れる事になった。ここからは、経験談を元にノウハウっぽく説明しよう。
1.学校を探し、電話番号を調べる
住んでいる近所の学校を探す。年齢によるが、例えば、私の娘の場合、学校名にPrimary
SchoolかInfant Schoolが入っているものを探す。私立校は、とんでもなく授業料が高く、一学期で8000ポンド、 約160万円と言う噂を聞いたので、無し。
公立校は、公立を意味するMaintainedが校名に入っていれば間違いないのだが、私の娘の学校のようにChurch
of England(英国国教会立)の学校も公立扱いだから難しい。とにかく、電話帳の私立校(Independent)でなければ、良いか??
私の場合、近所の子供が8時半頃、親に連れられて登校するのを妻がつけて見付けた。この校名から電話帳で電話番号を調べた。
このような調べかたでは、正確には学区があっているか、本当に公立校かはよく判らないが、とにかく近所の学校に電話してみよう。英国人は、たとえ学区や私立/公立の間違えがあっても、丁寧に聞けば、必ず正しい連絡先を教えてくれるはずである。
2.学校に電話する
私の場合、家から僅か歩いて5分のBurpham Grant Maintained Primary Schoolに電話した。校名から言っても公立校(Maintained)であり、娘が通うべきInfant
SchoolとJunior Schoolの両方が一個所(Primary School)にある事が判る。学区が違う可能性は残されていたが、それは電話して確かめるしか無い。
電話すると、娘の歳、生年月日、住所等を聞かれる。学校に空席があると、学校には受け入れの義務がある。この場合は、「5.学校に受け入れてもらう」へ飛ぶ。
私の場合、不幸な事に空席が無かった。空席が無ければ、当然受け入れられない。が、ここで怯んでは行けない。(私は最初怯んでしまった) 更に食い下がって、教育委員(?)に当たる人の連絡先(電話番号)を聞き出す。
3.教育委員(?)に電話する
この教育委員(?)は、詳しい事はよく判らないが、市か州の学校の空席などを管理しているようで、事情を説明すると、最も近い空席のある学校を紹介してくれる。紹介と言っても電話番号を教えてくれるだけだが。
4.もう一度、学校に電話する
私の場合、家から車で5分くらいの隣町にあるMerrow Church of England Infant
Schoolを紹介してもらったので、そこに電話した。教育委員(?)の方から話が伝わっている訳ではないので、自分で、「最初の学区内の学校が満席で断られ、次に教育委員に紹介してもらった」と事情を説明する。
ここで、空席があれば(ある筈だ)、「5.学校に受け入れてもらう」へ。
万一、無ければ「3.教育委員(?)に電話する」へ飛び、もう一度、教育委員と話し合う。
5.学校に受け入れてもらう
学校に空席があり、受け入れが認められると話は、すぐに進む。校長先生との面接のアポイントメントを取り、電話は終了。
6.校長先生の面接(Interview)
電話から、2日後の金曜日、校長先生の面接に一家揃って挑む。私は英国に渡って初めて背広とネクタイを着た。(仕事柄、普段はラフなスタイルでいる。)
校長先生は、年配の御婦人でとても上品な方だったが、服装はデニム地の上下と言うカジュアルなものであった。
正直に、短期しか居ないこと、娘は全く英語が喋れないことを話した。本当に受け入れてもらえるか、また、受け入れてもらえても、学校に入るまでに数ヶ月とか待たされると言う噂を聞いた事があるでハラハラものだった。
が、逆に校長先生に、「大丈夫! 日本に帰る頃には、お父さん・お母さんより英語が喋れる。」と逆に励まされ、即日入学を許可されたのである。週明けの火曜日(月曜日は祝日だった)から登校する事に決まった。
授業の内容の説明を受けたが、日本の幼稚園と同じ年齢とは言え、一応、小学校らしく、国語(もちろん英語)、算数、理科、社会と体育、美術、工作の授業がある。と言っても、元々英国の学校は、宿題とかはほとんど無く、授業も楽しいそうで、特に低学年は大変では無いらしい。
その後、校長先生に校内をくまなく案内してもらったが、日本の学校よりも遥かに明るい雰囲気で楽しそうなところあった。壁には、絵や工作が飾ってあり、「これは娘も喜んで、絵を描いたり工作したりできそうだ。」と予感した。
帰りに、学校の事務室で、学校名の入ったカーデガンと夏服と体操服を買った。
7.制服を買う
英国の公立校は、基本的に無料で、授業料から、教科書、ノート鉛筆に至るまで支給される。逆に、私立校は、とんでもなく高い。
授業料は無料と言っても制服は違うようで、面接の帰りに学校の事務所で、カーデガンと夏服と体操服を買った。カーデガンと体操服には学校名の入っているので、学校で買わざるを得ない。翌日の土曜日に、冬服と靴等をギルフォードの街中のマークス&スペンサーで買った。これらは制服と言うより、標準服と言った方がいいかもしれない。(ついでに、制服売り場で、私用の運動靴も買った。どうも英国の大人用の靴は大きくて私には合わない。買った靴も中学生用かな?)
娘は、制服が大変気に入ったようである。制服の写真は、ここにあるので、見てもらたい。
8.晴れて入学
週が開けて、火曜日、いよいよ初登校の日である。全く英語の喋れない娘のために、「お助けノート」と名付けた小さなメモ帳を作った。例えば、「トイレに行きたい」とか「気分が悪い」を英語と日本語の両方で書いたものだ。その上、日本で買っておいた子供用の英和・和英辞書を持たせた。(娘は、ひらがな・カタカナと簡単な漢字なら読み書きができる。)
登校は9時で、下校は3時で結構長い。この間、親と日本に居る祖父母は、ハラハラのし通しだったが、本人は、けろっとしたもんで、「楽しかった」と帰って来た。私の作った「お助けノート」は、ほとんど役に立たなかったらしい。逆に子供用の英和・和英辞書は、大活躍だったそうだ。
ここで、娘の通っているMerrow Church of England Infant Schoolの説明をしよう。
学校名を、日本語に訳すと、メロー英国国教会インファント学校である。メローは、ギルフォード市の中の町の一つで、私のすむBurpham
(バーファム)の直ぐ南隣である。先に電話して、定員一杯で断られたBurpham
Grant Maintained Primary School(バーファム公立プライマリー学校)は、町内にある。バーファム公立プライマリー学校が、インファントとJunior(ジュニア)の両方を持ち、5歳から11歳の子供を対象にしているのに対し、メロー英国国教会インファント学校は、5歳から7歳の子供を対象にしている。なお、メロー英国国教会インファント学校は、入学前の4歳児の入学も認めており、年齢的には、日本の幼稚園と全く同じと言って良い。
このメロー英国国教会インファント学校、英国国教会立だが、公立学校と全く同じ扱いである。英国国教会立と言っても宗教色は 極めて薄いのも同じだと思う。校長先生の面接の時も、宗教を聞かれた時、「仏教だ」と答えても別に何の反応も無かった。
一クラスは、30人弱で、各学年に2クラスずつのこじんまりした学校で、娘の他に日本人は一人も居ない。
「言葉の通じないところで一人で大丈夫か」「クラスで、たった一人の東洋人の娘がいじめられた居ないか。」と言う、親の心配は何処吹く風で、娘は毎日楽しんで学校に通っている。皆、結構親切にしてくれるらしい。
そんな、こんなで、娘が学校に通い始めて、早、3週間近くも経った。最近では、友達もできたようで、やれ、エマーちゃんだとか、クリストファーくんだとか、ジェニファーちゃんだとか、如何にも外人らしい名前が、毎日飛び出す(外人は私達の方だが)
娘より、むしろ、親の方が、ハイキングの付き添いだとか、父兄会だとか、誕生パーティだとかで苦労している。ハハハハ。
英語の話せない子供を、英国の学校に通わせるのは心配である。が、子供は結構、適用していくものである。