マツド・サイエンス研究所

本当に「誰も将来に斬新な価値を生む研究を選ぶこと等できない」のか?

仮説レベル c4
2019.06.30

概要

基礎研究や革新的技術開発では「選択と集中」は間違っていた大きな原因の1つが「将来、役に立つ基礎研究や革新的技術開発を予測するのは不可能」と思い当たった。
なぜ、そう思い当たったかを説明する。

大前提であり、事実

「選択と集中」と言う政策・経営戦略が失敗し、日本が斬新な研究・開発ができなくなってると言う事実

中間段階

もし、仮に「将来に斬新な価値を生む研究を選ぶことができ、それが経営戦略に反映されていれば」なら、「選択と集中」は成功している筈である。
「選択と集中」が失敗している事実から「将来に斬新な価値を生む研究を選ぶことができ、それが経営戦略に反映されている」が否定される。

分析

「将来に斬新な価値を生む研究を選ぶことができ、それが経営戦略に反映されている」の否定は、次の3つの可能性に分割できる
  1. 誰も将来に斬新な価値を生む研究を選ぶこと等できない
  2. 「将来に斬新な価値を生む研究を選ぶことができる」人は存在するが、経営戦略に反映されない
    1. 「将来に斬新な価値を生む研究を選ぶことができる」人は、出世できない
    2. 「将来に斬新な価値を生む研究を選ぶことができる」人が出世しても、多数決などの理由で、経営戦略に反映されない

「将来に斬新な価値を生む研究を選ぶことができる」人は存在するのか?

「誰も将来に斬新な価値を生む研究を選ぶこと等できない」と言うと、「スティーブ・ジョブズのように未来を予測できる人は居る」と反証がでてきそうだ。 日本人でも盛田昭夫や井深大(SONY創業者)、本田宗一郎(本田技研創業者)のようなカリスマなら「未来を予測できたのでは?」と
しかし、私はあえて、「スティーブ・ジョブズ、盛田昭夫や井深大、本田宗一郎らのカリスマであったとしても、将来に斬新な価値を生む研究を選ぶこと等できない」と言う可能性が高いと言いたい。
彼らのようなカリスマは、「未来予測ができた」のではなく、「斬新な研究・開発は、べき乗分布することを知っていた」のではないか?
もちろん、彼らが活躍したのは、「ブラックスワン」など べき乗分布の研究以前であり、知識として学んだのではなく、本能的・天才的な直観で知り、それを活かすような経営をしていたのではないだろうか?
べき乗分布する場合、「大半が無駄になることを覚悟で、多数の斬新な研究・開発に無条件で資金を分配する」のである。
優秀な管理職
従来の「ベル型信仰の人の中での優秀な人」。言うまでもなく、皮肉で言っている
なら、すぐに止める件だが、彼らは創業者であり、ワンマン社長で、誰も反対できなかった

「将来に斬新な価値を生む研究を選ぶことができる人」は出世できない?

もし、「将来に斬新な価値を生む研究を選ぶことができる人」が居ても、現在の日本の企業では出世できない可能性がある。いくら、未来予測ができても、それが経営戦略に反映できるほどに出世できなければ、役には立たたない。
私自身は、彼らは「未来予測ができた」のではなく、「斬新な研究・開発は、べき乗分布することを知っていた」の方が可能性が高いと思っているのは、既に述べたが、そうであったとしても、「大半が無駄になることを承知の上で、斬新な研究・開発に予算を配分するような資質を持った人が、「無駄をなくす」事を信条とする現在の企業の中で出世できないことは同じであり、同等なくらい大きな問題を内包している。
「将来に斬新な価値を生む研究を選ぶことができる人」であろうが、「斬新な研究・開発は、べき乗分布することを知っていた」であろうが、出世できなければ、同じくらい大きな問題なので、この件については、別途ページを起こして、解説したいと思う
なかなか込み入った話になりそうなので、ページを書くのに時間がかかりそうである
、」

「将来に斬新な価値を生む研究を選ぶことができる人」の意見は、経営戦略に反映できない?

これも前節と、ほぼ、同様である。
「将来に斬新な価値を生む研究を選ぶことができる人」であろうが、「斬新な研究・開発は、べき乗分布することを知っていた」であろうが、出世できたとしても、経営者のメンバーの中では、少数派で、多数決で貴重な意見が消えてしまうなら、居ないのと同じだ。 この件については、同じく別途ページを起こして、解説したいと思う

結論

「将来に斬新な価値を生む研究を選ぶことができる人」など誰も居ないと私は思っている。
しかし、この仮説は、未だ証拠不十分で、証明しきれてはいない
って言うか、こう言う「○○など、世界の何処にもない」と言う命題は「悪魔の証明」なんじゃないか?
仮に「未来予測ができる人」が居ても、出世できなかったり、出世しても少数派で、多数決原理の元では経営戦略に反映できなければ、「未来予測ができない」のと事実上同じである。
これ以上は、議論を複雑にしてもしょうがないので、「未来予測は事実上できない」と言う結論にしておこう