マツド・サイエンス研究所

仮説レベル

仮説レベル D4
2019.06.30

仮説レベル

議論をする時に、話題の対象になっている論理の検証レベルを明確にするのが良いと、常々感じている。
ここでは、私が考えた「仮説レベル」を紹介する。
考え方・評価・検証方法など
数学的厳密な証明 合理的説明 観測・実験・統計的有意性 数式等やシミュレーション 思い付き
検証者 世界 S1 A1 B1 N/A N/A
学会 N/A A2 B2 C2 N/A
第三者 N/A A3 B3 C3 N/A
仲間内 N/A A4 B4 C4 D4
個人 N/A N/A B5 C5 D5

説明

  • N/A
    • 該当なし
  • S1:数学的厳密性
    • 「厳密な証明されたフェルマーの定理」など
    • 数学以外の物理分野などでは、決して S1 に達しないことに注意
  • A1:合理的な説明
    • 十分な観測結果と合理的な説明があり、なおかつ長期に渡り、十分な反証に耐えているもの
    • 「質量保存則」とか「相対性理論」などの多くの物理法則が、このレベル
    • 数学分野では、「厳密な証明以前のフェルマーの定理」などが、これにあたる
  • B1:統計的有意性
    • 十分なサンプル数がある統計的有意性が示されているもの
    • かならずしも「合理的な理由」が説明されていなくても良い
    • 「センメルヴェイス・イグナーツ」の事例のように、統計上の有意性が示された事例で十二分に効果があることもある
    • 今まで、何人かに説明したが、必ず、「B1:統計的有意性」を「A2:教科書に載っているレベル」より上に置いていることに驚かれる。
    • センメルヴェイス・イグナーツについては、是非 Wikipediaを見てもらいたいが、簡単に言うと「分娩時に、手を洗う助産婦の方が、手を洗わない医師の方が、その後の死亡率が違う」と言うことに『統計的』に気付いたが、当時、病原菌の概念がなかった。イグナーツは医師に手を洗うことを提唱したが、何十年ものちにパスツールが連鎖球菌を発見するまで、顧みられることはなく、その間、手を洗わない医師によって感染した患者が死に続けた」と言うことである。
    • 日本の高木兼寛も、同じように間接的にビタミンを発見したにも関わらず、受け入れられなかったことがある。
    • これらから、「根本的な原因がわからなくても、十分なサンプル数のある統計的な有意性ある場合」は、それを受け入れるべきとした。
    • もちろん、これは「十分なサンプル数もなく、統計的に有意とは言えない」ような「民間療法」のようなものを支持するものではない。
  • A2:教科書に載っているレベル
    • 常識だとか、教科書に載っているからと言って安直に信じてはいけない
    • かならず、A1にならないか、理由を考えること
    • 先人の経験談程度は、A2のままである
  • A3~A4:そろそろ学会に出そうレベル
    • ここまで検証したら、早めに学会に出すべき
  • B2~B5
    • 観察や実験を行い、C2~C5の「仮説」の正当性を見出したレベル
    • 実際の実験が不可能な場合、コンピュータなどを使ったシミュレーションによる代替手段も考えられるが、どうしても実際の実験よりも信用性は劣る
  • C2~C4
    • 理論などを議論するレベル
    • 必ずしも実証実験などはいるわけではない
  • C5:考えを整理
    • E5から、最低、一晩寝かした
    • 数式を立てたり、合理的な説明を考えたりするレベル
    • 個人で閉じているとはいえ、2つ以上の独立した方法で説明できるようにすること
  • D5:個人的思い付き
    • 思い付いた直後から、半日以内が普通
    • しかし、短時間であっても、その場で他の人が検証することができれば、すぐにD4になる