野田篤司の英国文化考

その5 キットカーと自作スポーツカー(2) 部品取り車達 21st May 1998


キットカー&自作スポーツカーと「部品取り車」

 「キットカーと自作スポーツカー」のページで紹介したように、英国には車を自分で作り、ナンバーを取って公道を走らせる趣味が存在する。前述のページでも述べたが、キットカーの多くと自作スポーツカーには、「部品取り車」(donor car)が必要である。この「部品取り車」、英国ではポピュラーな車なのだが、日本では馴染みの無い車が多いので紹介する事にした。
 このページでは、街(ギルフォード市内)で見かけたキットカーの「部品取り車」として使える車達の写真である。もちろん、全て現役の車で、道路端に駐車してあったのを、持ち主に無断で写真に撮っただけの物である。従って、「部品取り車」にするには、もっとボロでも良い。(もっとも、写真の車の中には、相当のボロ車もあったが)
 なお、説明文中にある対比した日本車の説明は、全てうる覚えの情報なので、間違っていたらごめんなさい。(指摘はメールで下さい)

フォード エスコート(FR) Ford Escort

 「部品取り車」の王者。これは、1980年にFF化される前のFRタイプ。
 英国におけるカローラかサニーかと言う存在で、前述のページで紹介した「Specialist Sports Cars STYLUS」、自作スポーツカーや日本でも販売(といっても完成品としてだが)している「FISHER FURY」の「部品取り車」で、他にも数多くのキットカーの「部品取り車」である。
 フロントは、マクファーソン・ストラット、リアはリーフ・リジットで、特にリアサスペンションが、セブンタイプのキットカーに使われている。1100、1300、1600ccがあり、写真は1300cc。
 昔は、相当走っていて入手性が良く、安価なライトウェイトスポーツに最適だったのだろう。流石に現在ではFRタイプは古すぎて、ほとんど走っていない。実は、写真を撮ために、この車を探すのが一番大変だった。

フォード コルティナ Ford Cortina

 FR。フロントはダブルウイッシュボーン、リアはリジットと言う昔のSR311やダットサントラックとかクラウンのような形式。この形式でモノコックでは大昔のジェミニと派生型の117・ピアッツアくらいかな?もっともあのジェミニはオペルのノックダウンだったから日本車とは言いがたいが。
 フロントのサスペンションが、キットカーに良く使われる。自作スポーツカーでもフロントのハブが使われている。もちろん、ダブルウイッシュボーンにしやすいからである。(前述のページでも述べたが、マクファーソン・ストラットのフロントハブを改造してダブルウイッシュボーンにすると言う荒業も存在する。)

フォード シエラ Ford Sierra

 フロントはマクファーソンストラット、リアはセミトレーリングアームと言うBMW型。もちろんFR。4気筒なので、日本では、510から910のブルーバードと言ったところか。
 前述ページのコブラレプリカ「SUMO」を初め多数のキットカーの「部品取り車」として使われる。リアサスを、そのままセミトレとして使うキットカーから、ドディオンにするものまで、色々ある。

フォード フィエスタ Ford FiESTA

 FF。フロントのマクファーソンストラット、リアはトレーリングアームが左右Uの字型に繋がっているセミ独立懸架。昔のミラージュと同じ形式。
 Quamtum社のキットカー等の「部品取り車」となっている。

 ここまでのフォード軍団は、フォードと言っても、アメリカ製ではなく、英国フォード製である。この後の車を見ても、シトロエン2CVとフォルクスワーゲンを除いて全て英国車である。

オースティン ミニ Austin Mini

 もちろんFF。この車、四輪独立懸架なとこまでは間違いないとして、その先はラバースプリングだとか前後サスをリンクしているだとか、結構複雑で、正確なサスペンション形式は良く判らない。日本にも馴染み深い車だし、下手にうんちくを傾けると指摘が沢山返ってきそうなので、これ以上言及しない。題名にオースティンと社名を入れただけでも文句が来そうだな。
 日本でも有名なミニ・マーコス Mini-Marcosは、この車のフロアパンを流用している。
 日本で大人気のミニは本国英国でも大人気で古くなっても値が下がらない為、「部品取り車」としてはメリットが無く、下のメトロが代わりに使われている。

オースティン メトロ Austin Metro

 これもFF。サスペンション形式は調べていないが、ミニと同じようなもんだろう(憶測)。ミニが古くなって、そのモデルチェンジにメトロを作ったはずが、元祖ミニは未だに生産しているのに、メトロの方が先に生産を中止した可哀想な車。中古市場でも不人気でやすい為、小さなキットカーの「部品取り車」になっている。
 GTMのROSSAやMIDASと言ったミニ・マーコスそっくりなキットカーが、「部品取り車」をミニからメトロに変更している。

ジャガー XJ Jaguar XJ

 ジャガーが「部品取り車」だって!? 理由は大きいタイプのキットカーには、サスペンションの質が高いからなんだって。あったりまえだよ。
 もちろんFRで、フロントは、ノーマルなダブルウイッシュボーンなんだけど、リアが変わっている。私も知らなかったんだけどロアボーンは普通なんだけど、ドライブシャフトがアッパーボーンの代わりをしている。
 多くのコブラレプリカがジャガーを「部品取り車」にしており、前述ページのSUMOにもジャガーを「部品取り車」にするバージョンがある。
 いくら中古とは言え、ジャガーを部品取りに使うなんて、日本では想像できない話。

シトロエン 2CV Citoren 2CV

 FF。フロントはリーディングアーム、リアがトレーリングアーム。
 フロアパンごと使うキットカーやフロント周りだけを使った三輪車のキットカーの「部品取り車」とすることもある。

 以前は、ミニやフォルクスワーゲンと並んで、キットカーの「部品取り車」の王者だったんだけど、やはり生産中止後、人気が有って、「部品取り車」にし難いみたい。

フォルクス・ワーゲン ビートル VW Beetle

 RR。フロント、リアともにトーションバースプリングのトレーリングアーム方式。ポルシェの趣味みたいなもの。
 結構有名なNovaや数多くのバギータイプのキットカーにフロアパンごと使われていた。

 そう言えば、ギルフォードに白いNovaが居て、私が大学から帰る時、時々追いぬいていったんだけど、ある日、エンコしたのかレッカーに引かれていったのを見たのを最後にばったりと見なくなった。お亡くなりになったのかなあ?合掌!

番外1 トライアンフ ヘラルド Triumph Herald

 とっても古い車。もちろんFR。今では、希少価値が出てしまって、「部品取り車」にはならない。
 何とこれが、かのロータス・セブンの「部品取り車」だったらしい。すくなくとも、フロントサスとフロントハブが。(と前述ページのTHE KITCAR BUILDER'S MANUALに書いてある。だが、他の本にはFordを使ったとか。どれが本当か?)
 それにしても、トライアンフは、こんな大衆車も作っていたんだ。どうも、日本ではトライアンフってTR2とかTR4とかのスポーツカーとオートバイのイメージだよね。写真の車は、偶然、道を間違えてUターンする為に入った路地に駐車してあったんだよね。運が良い。
 ところで、トライアンフってどうなったんでしょうか?最後に聞いた時には、ホンダの車を作っていたようであったが、まさか今はホンダの英国工場になっているのではないよね!?

番外2 フォード エスコート(FF) Ford Escort

 これは、私の車である。
 1988年製のエスコート、FFである。フロント、リア共にマクファーソンストラット。10年落ちでも新しすぎて、「部品取り車」にならない。
 現在、うじゃうじゃ走っているから、きっと未来の「部品取り車」の王者になるであろう。


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