マツド・サイエンス研究所

『正しい分配』を阻むもの

仮説レベル c4
2019.06.30

概要

基礎研究や斬新な技術開発が生み出す価値の確率分布は、べき乗分布だと推測した
もし、そうなら、細かく分配した方が良いことになる。
しかし、それを阻む障壁も多く発生しそうだ。

『正しい分配』を阻むもの 『非論理的な障害』

べき乗分布を前提にした『研究資金をできるだけ大勢に分配すべき』戦略の最大の課題は、「本当に べき乗分布しているか? べき乗分布しているなら、その分布パラメータをどう推定すれば良いか?」であることは間違いない。
それは、純粋な『数学的な問題』であり、その解決の糸口は、べき乗分布の場合のパラメータ推定にしめした。
しかし、実際には、この『数学的な問題』よりも、『非論理的な障害』が多く出現すると思われる。
これ以降には、出現が予想される『非論理的な障害』について説明する。。

『非論理的な障害』 その1 「管理が大変だ」

「そんなに多人数に分配したら、選別が大変だ」「評価が大変だ」と言い出す声が聞こえそうだ。 だが、この話「集中と選択が間違っている」から始まっているのだから、誰かれ構わず、無条件にバラ撒けば良い。
また、8割の人が「分配された予算を下回る価値しか生み出せない」のだから、成果を評価する必要もない そもそも評価して、何をするのだ? PDCAサイクルを回して、フィードバックをしようと言うのか? これも「選択と集中」の一つに他ならない
要は、 「誰も将来に斬新な価値を生む研究を選ぶこと等できない」事が大前提だ いかなる優秀な研究者であっても例外ではない。 優秀な経営者も同じだ。 誰も将来の予想などできない。
仮に上司が認めても、契約部門が「無駄な買い物・出費は駄目だ」と言う事がある。 8割の人が「分配された予算を下回る価値しか生み出せない」のだから、過半数は無駄だと言ってくるかもしれない。 しかし、斬新な研究とは、そういうものなのだ。 大半の『無駄』を許容しないと、千に3つしかない輝かしい価値を生み出すことはできない
何度も繰り返すが、『将来に斬新な価値を生む研究を選べない』ため、『無駄をなくす』行為そのものが『最大の無駄』なのである。

『非論理的な障害』 その2 「まとめた方が良い」

多くの人に10万円を分配すると必ず次のように言う人が出てくる。
「10万円じゃ碌な事ができない。有効に使うために、選別して、10人分まとめて、100万円でやろう」と
もし、「少ない金額しか分配されるなら、お金を使うための手間が大変」と思うなら、分配方法ではなく、経理システムを見直した方が良い。
経理システムが駄目
どこぞのクソ発議システムのように
で、一回の発議に6分
どこぞのクソ発議システムは、さらに10倍の時間がかかりそうだが
かかるなら、最低賃金の時給千円でも100円のロスに等しい
そのうえ、「記入ミスがある」だの「この購入品は無駄にならないか」だの色々と言ってきて、無駄時間がさらに増える
繰り返すが、「過半数どころか、8割は無駄」な斬新な研究・開発を如何に進めるかの話をしているのであって、「無駄かどうかを説明する」時間自体が最大の無駄なのである 経理システムは、不正使用が無い事見張るくらいで、自動販売機で缶コーヒーを買うくらいの手間まで、省いて欲しい
ただ、「少ない金額を分配されても碌な事ができない」と言う点は、ある程度、合意できる。 数学的には、べき乗分布するなら、多人数に細かい金額で分配するほど良いのだが、実際には、同じ合計1000万円の予算でも、10万人に100円ずつ分配しても何も生まれないような気がする。
極端な話、1000万より多い人には、1円未満になるので、分配できなくなる。
べき乗分布は、分配・細分化する限界があるのかもしれない プランク定数みたいなものは存在するかもしれない。

『非論理的な障害』 その3 「こんどこそ、リベンジを」

「斬新なアイデア募集」と言うと毎回同じ事を提案する人がいる
1年目に上手く行かなかったら、2年目にリベンジ、それでも駄目なら3年目にリベンジと言うわけだ
全ての人が10年間同じ事をリベンジし続けると、そう個数が減るのと同じである
リベンジはNGで、毎年新しいアイデアに挑戦するように

『非論理的な障害』 その4 「負け組のメンタル面のサポート」

斬新はアイデアは、千に3つ
8割は、分配された予算より多い価値を生み出せない
つまり、「1000人のうち、997人は負け組」もしくは「8割は負け組」と思い込む人が出てくる
過半数が「自分は負け組」だと思い、ネガティブなメンタルを持ったら、組織全体がが駄目になる
注意すべきは下の2点
  • 上司もしくは同僚が「無駄だった」と言うようなネガティブな減点評価をしない。そもそも多くが無駄なのは覚悟の上。プラスが出た時だけ、評価をする。
  • 1回や2回駄目だったからと言って、「自分には、新しいアイデアを生み出す才能はない」と諦めないこと。
実は、最後の問題点が、斬新な研究を阻んでいる最大の障壁だと思っている
すなわち、日本人の過半数が「自分には、新しいアイデアを生み出す才能がない」と思い込んでいる事だ
8割が元手を超えず、真の斬新なアイデアが千に3つなら、少なくとも 5回、できれば333回のチャンレンジをしなければ、確率的に成功体験を得る
逆に、「333人に1人は、ファースト・チャレンジで当たりを引く」幸運に恵まれる。この少数の人だけが「自分にはアイデアを生む才能がある」と思える
ことができない
圧倒的な多数が、アイデアを生む成功体験を持たず、「自分は新しいアイデアを生み出す才能はない」、ひいては「自分と同じレベルの人は、新しいアイデアを生む才能はない」と思い込んでいるのが、大きな障害になっている。

『非論理的な障害』 その5 「事業を回すために」

最後は、少し変わった、そして重要な話題だ。
もし、このような「斬新な研究」を営利企業が事業ととして行う場合、どうやって資金繰りするのかと言う話である。
税金でまかなわれている研究の補助なら、社会に還元されれば、それで良いのだが、
現実には、税金による研究補助こそ「選択と集中」で駄目になっているのだが
営利企業の場合、研究・開発で得た利益で、事業を回さないといけない。
8割の人は、配分された以上の価値を生み出さないので、回収する必要はないのだが、上位200人の生み出す価値の合計円であり、その% を会社が回収しないと事業が成り立たない。
トップの円の価値を生み出した人は、円も会社に返さなくてはならず、「僅か円しか分配されないのに円を会社に返すのは不当である」と訴えられそうだ
また、知的財産と言う問題もある
上手く行かなかった成果も公開すれば、誰かが上手く利用するかもしれない
しかし、「例え上手く行かなかくても、もしかしたら価値があるかもしれない。特許を取るにはコストがかかるから、秘密にしておこう」と「死蔵」してしまいがちである
なんとかしたいものだ